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2026年防災気象情報の体系整理のまとめ

「防災気象情報に関する検討会」の最終取りまとめに基づき、2026年出水期(大雨災害の発生時期)頃を目途に予定されている防災気象情報の体系整理について、まとめるものです。


概要

なぜ必要になったのか

気象庁では運用中の各種防災気象情報について適宜見直しをおこなっており、その結果として個々の情報の高度化や各市町村の防災対応支援の強化に一定の効果はありましたが、 一方で情報数の増加や運用の複雑化等の問題も生じました。

また、令和元年(2019年)から導入された「警戒レベル」についても、その警戒レベルに応じて、これに相当する防災気象情報の発表を主体的におこなう機関や、発表の基準が異なる等の課題がありました。

このような状況から、シンプルでわかりやすい防災気象情報の提供に向けた、これら情報全体の体系整理と個々の情報の見直し、及び受け手側の立場に立った情報への改善等のため、 令和4年1月(2022年)から令和6年6月(2024年)にかけて「防災気象情報に関する検討会」を開催し、検討をおこないました。

配信資料に関する技術情報 第634号 の内容を一部編集して記載

シンプルに言えば、災害が起きるたび防災情報の新設や変更を長年積み重ねた結果、発表主体や運用が複雑になってしまったので整理をおこないたい、ということです。

対象となった情報

今回の体系整理の対象となった気象警報・注意報、気象情報関連電文は以下の通りとなります。

  • 大雨特別警報、大雨警報、大雨注意報
  • 洪水警報、洪水注意報
  • 高潮特別警報、高潮警報、高潮注意報
  • 土砂災害警戒情報
  • 指定河川洪水予報
  • 全般・地方・府県気象情報
  • 記録的短時間大雨情報
  • 竜巻注意情報
  • 全般台風情報
  • 早期注意情報
  • 大雨危険度通知
  • 気象特別警報報知

警戒レベル相当情報以外の警報・注意報の体系整理

「暴風、波浪、大雪、暴風雪に関する特別警報・警報・注意報」、「警報のない注意報」については、「改めて検討の場を設けて議論」とされ今回の体系整理で対象とはなりませんでした。

ただし、電文上での運用変更があり注意が必要です。

体系整理の対象外となった特別警報、警報及び注意報
  • 暴風、波浪、大雪、暴風雪に関する特別警報・警報・注意報
    • 暴風特別警報、暴風警報、強風注意報
    • 波浪特別警報、波浪警報、波浪注意報
    • 大雪特別警報、大雪警報、大雪注意報
    • 暴風雪特別警報、暴風雪警報、風雪注意報
  • 警報のない注意報
    • 濃霧注意報、雷注意報、乾燥注意報、なだれ注意報、着氷注意報、着雪注意報、霜注意報、低温注意報、融雪注意報

警報・注意報の再編

今回の体系整理で大きな変更は、「洪水の特別警報ができる」と「危険警報が追加される」だと思います。

「危険警報」は、従来の警戒レベル4相当情報である「土砂災害警戒情報」や「氾濫危険情報」の名称を統一するために導入されました。

氾濫・大雨浸水に関する警報・注意報

現在、水位周知河川と中小河川(洪水予報河川・水位周知河川以外の河川)で、気象庁が発表する情報ではレベル4相当の情報がなかったものが、氾濫危険警報の導入により体系整理後は発表されることとなります。


表は防災気象情報に関する検討会報告を参考に作成

水位周知河川に関する情報は、提供開始時期未定

なお、体系整理によって「水位周知河川に関する情報」(以下表参照)が通知する水位周知河川の情報が提供開始時期未定となっているため、 この情報で通知する、氾濫特別警報、氾濫危険警報、氾濫警報、氾濫注意報は、それぞれ大雨特別警報、大雨危険警報、大雨警報、大雨注意報で発表することになっています。


つまり、体系整理直後は以下のような表になります。

  • 洪水予報河川:指定河川洪水予報が発表対象とする河川
  • 水位周知河川:国土交通省大臣または知事が指定する河川で、洪水により相当な被害が生じる恐れのあるもの

土砂災害に関する警報・注意報

特別警報・警報・注意報と土砂災害警戒情報の2つの情報がそれぞ独立し名称が異なっている、発表の基準の考え方が統一されていなかったものが、統一(60分雨量と土壌雨量指数の複合基準)されることになります。


表は防災気象情報に関する検討会報告を参考に作成

高潮に関する警報・注意報

現在、「高潮特別警報」と「高潮警報」がどちらも警戒レベル4相当情報という位置付けになっていたり、 「警報に切り替える可能性の高い高潮注意報」が警戒レベル3相当情報に位置付けられ、ほかの警戒レベル相当情報の警報・注意報と非整合的となっています。 また、警戒レベル5相当情報が都道府県が発表することとなっており、気象庁の出す情報を見るだけでは不十分でした。

体系整理により、他の警報・注意報と整合的になったほか潮位だけではなく沿岸に打ち寄せる波浪(うちあげ高、なおこの運用は次の行で登場する指定沿岸のみ)も考慮した発表基準に改められることになります。

また、市町村ごとの運用と併用して国土交通省大臣が指定する海岸(高潮により重大な被害が生じる恐れのある海岸)において、高潮の予報・警報を発表することにしています。 (高潮の共同予報・警報を実施する指定海岸は、順次指定される予定です。)


表は防災気象情報に関する検討会報告を参考に作成

警戒レベル相当情報の名称

今回の体系整理で「危険警報」という新しい名称が追加されることになり、特別警報と比較してどちらがより危険なのかわからない、 現在の「警報」という名称が警戒レベル4相当(高潮警報)と警戒レベル3相当(洪水、土砂災害)あること等の対策として、「レベル」表記が名称に付加されることになりました。

この「レベル」表記は「警戒レベル相当」の省略として記載されているため、本来の「警戒レベル」(自治体の発表する避難情報)とは異なるので注意が必要です。 なお、「体系整理の対象外となった特別警報、警報及び注意報」には「レベル」表記は付与されません。

現在、「警戒レベル」が一般社会に浸透してない状況ではありますが、将来的には「洪水レベル5」、「大雨レベル3」等といったシンプルな名称にシフトしていくことも一案であるとされています。

気象情報の再編

記録的短時間の大雨や線状降水帯、大雪などの具体的な極端現象が発生または発生しつつある場合にその旨を伝える「極端な現象を速報的に伝える情報」と、 現在及び今後の気象状況等を網羅的に伝える「網羅的に解説する情報」に分類されます。


表は防災気象情報に関する検討会報告を参考に作成

電文での変更

気象警報・注意報関連

警報・注意報等(VPWWii (ii=55~61))

★新規電文

大雨、土砂災害、高潮、暴風(暴風雪を含む)、波浪、大雪に関する警報・注意報は、それぞれ独自の電文になります。

また、これ以外の注意報に関する情報(雷、融雪、濃霧、乾燥、なだれ、低温、霜、着氷、着雪、その他の注意報)をまとめ、単一の電文になります。

高潮警報・注意報については、指定した海岸の予報区に対してうちあげ高を活用(潮位も継続利用)して発表し、 従前の二次細分区に対する警報・注意報も同一電文内で発表されます。

警戒・注意事項と各気象要素の時系列予想(VPWP50)

★新規電文

既存の気象警報・注意報(VPWW54)に含まれる時系列情報と早期注意情報(明日までの警報級の可能性)に含まれる量的な見積もりが統合され、 今後の量的な見積もりを警報・注意報の発表状況に関わらず全要素(指定河川洪水予報、水位周知河川に関する情報で発表される要素を除く)、時系列データが定時的に提供されます。

また、既存の気象警報・注意報(VPWW54、VPWW53)で提供されていた特別警報・警報への切替の可能性の予告(NextKinds要素)はこの情報に集約され、警報・注意報等電文(VPWWii (ii=53~61))では提供されません。

警戒・注意事項を全要素した全国集約通報(VPWS50)

★新規電文

状況把握を容易にするため、全要素(指定河川洪水予報、水位周知河川に関する情報で発表される要素を除く)の発表状況を集約した情報を高頻度に定時配信されます。

水位周知河川に関する情報(VXSUii (ii=50~59))

★新規電文/この情報は、当面の間は配信が見送られます。

本来この情報で伝えられる予定だった、水位周知河川の警報事項等は、大雨に関する警戒レベル情報(VPWW55)を用いて発表されます。 なお、大雨に関する警戒レベル情報(VPWW55)電文内で、水位周知河川又はその他河川の外水氾濫・内水氾濫よる浸水基準で発表基準に達したかは判別できません。

早期注意情報(明後日までの警報級の可能性)(VPFD61)

★新規電文

現在提供されている、早期注意情報(明日までの警報級の可能性)(VPFD60)の「警報級の可能性」の部分を予報期間を延長しされます。 明日までは、12時間または18時間の時間幅で発表していたものを6時間の幅、明後日については、1日の時間幅であったものを午前・午後に分けて発表されます。

早期注意情報(明々後日以降の警報級の可能性)(VPFW60)

既存の電文をそのまま使用

Head/Titleを「明後日以降の警報級の可能性」から「明々後日以降の警報級の可能性」へ変更されますが、内容・XML構造に変更はありません。 なお、明後日の予報部分については、部分的な経過措置電文の扱いとなり一定期間後に値の提供が運用終了の予定です(運用終了後もXMLの構造は変更がない予定)。

指定河川洪水予報(VXKOii (ii=50-89))

既存の電文をそのまま使用

廃止される電文

気象警報・注意報(VPWW54、VPWW53)

経過措置電文となり、2028年以降に廃止予定です。

経過措置期間中、危険警報は警報として(土砂災害の危険警報は土砂災害警戒情報(VXWW50)で提供されます)、 指定河川洪水予報で発表する氾濫特別警報、氾濫危険警報、氾濫警報は、すべて洪水警報として発表されます。

なお、危険警報(土砂災害以外)と、指定河川洪水予報で発表される氾濫特別警報の発表状況をBody/Notice要素にテキストベースで記載されます。

特別警報・警報への切替の可能性の予告は、新規電文が配信開始と同時に運用終了となります(VPWP50に集約)。

土砂災害警戒情報(VXWW50)

経過措置電文となり、2028年以降に廃止予定です。

経過措置期間中、土砂災害の危険警報のみを報じることになります。

早期注意情報(明日までの警報級の可能性)(VPFD60)

経過措置電文となり、2028年以降に廃止予定です。

量的予想の部分については、新規電文が配信開始と同時に運用終了(値なし)になります。

大雨危険度通知(VPRN50)

気象庁のプッシュ情報になかった洪水・浸水のレベル4相当を通知できるため活用されてきましたが、 今回の体系整理で全ての警戒レベル相当情報のプッシュ情報ができることになったため、新規電文が配信開始と同時に運用終了となります。

危険度分布(キキクル)の変化を使用したい場合は、GRIB形式のデータを用いることにより代替が可能です。

気象特別警報報知(VPNO50)

経過措置電文となり、2028年以降に廃止予定です。

気象情報関連

気象防災速報(VPBS50)

★新規電文

既存の全般/地方/府県気象情報(VPZJ50、VPCJ50、VPFJ50)で提供されていた、顕著な大雨に関する情報や顕著な大雪に関する情報、短文形式の気象情報、 記録的短時間大雨情報(VPOA50)を集約し、テキストベースだった情報が構造化(地域や観測地点、雨量などの要素)されました。

府県予報区ごとに電文が運用され、全般、地方レベルの電文運用はありません。

気象解説情報(VPZJ51、VPCJ51、VPFJ51)

★新規電文

既存の全般/地方/府県気象情報(VPZJ50、VPCJ50、VPFJ50)で提供されていた、現在の気象状況や今後の見通し、線状降水帯の半日前予測など、 テキストベースだった情報が構造化(地域・観測地点の雨量などの要素)されました。

また、既存の全般台風情報(VPTI50)、全般台風情報(定型)(VPTI51)の中で提供されてきた観測情報は、全般気象解説情報の中で報じられるようになります。

気象防災速報(潮位)(VPBS51)

★新規電文/この情報は、当面の間は配信が見送られます。

気象解説情報(潮位)(VMCJ53、VMCJ54、VMCJ55)

★新規電文

既存の全般/地方/府県潮位情報(VPZJ50、VPCJ50、VPFJ50)で提供されていた、大潮、高い潮位、副振動、異常潮位の現在の状況や今後の見通しなど、 テキストベースだった情報が構造化(地域・観測地点、潮位の推移などの要素)されました。

竜巻注意情報(VPHW50、VPHW51)

既存の電文をそのまま使用

Head/Titleを「竜巻注意情報」から「気象防災速報(竜巻注意)」または「気象防災速報(竜巻目撃)」へ変更されますが、内容・XML構造に変更はありません。

「気象防災速報(竜巻目撃)」は、竜巻の目撃情報が実際にある場合に運用されます。

廃止される電文

全般/地方/府県気象情報(VPZJ51、VPCJ51、VPFJ51)

経過措置電文となり、2028年以降に廃止予定です。

新規電文が配信開始後、新しい運用に合わせて平文の範疇で運用の整理がされます。

全般気象情報については、全般台風情報(VPTI50)、全般台風情報(定型)(VPTI51)の中で提供されてきた観測情報の情報を含みます。

記録的短時間大雨情報(VPOA50)

経過措置電文となり、2028年以降に廃止予定です。

全般台風情報(VPTI50)

新規電文が配信開始と同時に運用終了となります。

同電文で提供されてきた台風の状況や今後の見通し、上陸・通過については、全般気象解説情報(VPZJ51)で配信されます。

全般台風情報(VPTI51)

新規電文が配信開始と同時に運用終了となります。

同電文で提供されてきた観測情報については、全般気象解説情報(VPZJ51)で配信されます。

全般台風情報(VPTI52)

新規電文が配信開始と同時に運用終了となります。

二次細分区域の変更

体系整理に合わせて、二次細分区域の変更が予定されています。

最後に

まだ、未定な部分や不確定な部分もありますがあと半年程度で新しい防災情報がやってきます。

この体系整理が運用開始されても、次の防災情報の再編が待っています。頑張っていきましょう。

参考

2025年12月02日現在の情報に基づき作成しています。